BPM(ビジネスプロセス管理)ツールとは? 導入メリットや選び方を解説
市場や消費者ニーズなどのビジネス環境がめまぐるしく変わる現代。企業が高い生産性を維持しながら事業活動を続けるには、ビジネス環境の変化に応じて、最適な業務体制を構築し続けていくことが求められます。
その実現のための手法として、事業活動を構成する業務プロセスを把握・管理して、継続的に改善していくBPM(Business Process Management:ビジネス・プロセス・マネジメント)という取り組みがあります。BPMはビジネスプロセス管理とも呼ばれます。
BPMの取り組みには、業務プロセスの可視化をはじめ、計画・実行・評価・改善などのさまざまな作業が伴うため、人の手で行うと大きな労力がかかってしまいます。そこで活用したいのが“BPMツール”です。
本記事ではBPMツールの概要をはじめ、導入するメリット、ツールの選び方などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.BPMツールとは
- 2.ワークフローシステムやRPAツールとBPMツールとの違い
- 2.1.ワークフローシステムとの違い
- 2.2.RPAツールとの違い
- 3.BPMツールの導入メリット
- 3.1.①アナログ業務をデジタル化できる
- 3.2.②リアルタイムな情報共有ができる
- 3.3.③業務を標準化できる
- 3.4.④データ収集・分析ができる
- 4.BPMツールの選び方
- 4.1.①既存システム・データと連携できる
- 4.2.②ノーコード・ローコードに対応している
- 4.3.③一般の従業員にも扱いやすい
- 5.まとめ
BPMツールとは
BPMは、組織における業務のプロセスを管理して可視化や改善を行い、継続的に最適化に取り組む手法を指します。
BPMツールとは、BPMを支援・管理するツールのことです。BPMシステム、BPMソフトウェアなどとも呼ばれます。
業務プロセスの可視化・改善によって、作業状況が見えないことによる業務の遅延や、各従業員のリソース配分の偏り、業務の属人化といった課題を解決できます。
これらの取り組みは人の手で行うことも可能ですが、運用にはスキルが求められるほか、計画・実行・評価・改善といったPDCA(Plan・Do・Check・Action:計画・実行・評価・改善)の取り組みが必要になるため、担当者に負担がかかりやすくなります。ツールを活用することで、より効率的で質の高いBPMの取り組みを進めることが可能です。
BPMツールの基本的な機能として、以下の3つが挙げられます。
▼BPMツールの機能
機能 |
詳細 |
モデリング機能 |
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モニタリング機能 |
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外部ツールとの連携機能 |
|
ワークフローシステムやRPAツールとBPMツールとの違い
BPMと類似するツールには、ほかにもワークフローシステムやRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールが挙げられますが、それぞれ目的、業務の対応範囲などが異なります。
ワークフローシステムとの違い
ワークフローシステムは、社内の申請・承認といった決裁フローを自動化・電子化できるシステムです。BPMツールと導入目的やメリット、ルールの設定方法に違いがあります。
▼BPMツールとワークフローシステムの違い
BPMツール |
ワークフローシステム |
|
目的 |
業務の可視化・自動化・実行・改善 |
業務の実行・自動化 |
メリット |
変更のある業務フローや複雑な業務に対応できる |
安価、機能もシンプルに利用できる |
ルールの設定方法 |
ルールエンジンという機能があり、変更したルールを汎用的に使用できる |
一つのフローに対してルールを個別設定する必要がある |
BPMツールは、PDCAを回して業務のプロセスを継続的に最適化・改善していくことが目的です。
▼BPMツールでできること
これに対してワークフローシステムは、PDCAの“Do(実行)”に特化しており、簡易的な業務を自動化することを目的としています。
そのため、一般の従業員・上長・管理職といった比較的シンプルなフローで処理する業務は得意ですが、複数部門で同時並行に処理されるような複雑な業務の管理には対応できないケースがあります。
また、ワークフローシステムでは、一つのフローに対してルールを個別設定する必要があるため、ルールの修正が必要になった場合には、すべてのフローで修正作業が必要になります。
BPMツールであれば、変更したルールを汎用的に使えるため、関連するフローにも簡単に適用できるのが特徴です。
RPAツールとの違い
RPAツールとは、パソコンで行う事務業務を自動化する技術やツールのことを指します。BPMツールとの違いは以下のとおりです。
▼BPMツールとRPAツールの違い
BPMツール |
RPAツール |
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目的 |
業務の可視化・自動化・実行・改善 |
定型業務・単純作業の自動化 |
対応できる業務領域 |
業務プロセス全体 |
業務の一部 |
RPAツールは、これまで人が行ってきた定型業務・単純作業を自動化して、人的コストの削減や業務量の削減による生産性向上、ヒューマンエラーの防止などにつなげることが主な目的です。
また、業務プロセス全体を可視化・自動化・実行・改善して最適化を図るBPMツールに対して、RPAツールは業務の一部を自動処理する領域にとどまります。
BPMツールで業務プロセスの全体を管理しながら、データの自動処理が必要なフローに対してのみRPAツールを活用するといった活用が可能です。BPMツールと既存システムを連携できれば、RPAツールを導入しなくてよいケースもあります。
BPMツールの導入メリット
企業がBPMツールを導入することによって、主に4つのメリットが期待できます。
①アナログ業務をデジタル化できる
BPMツールを導入する1つ目のメリットは、人の手で行っていたアナログ業務をデジタル化できることです。
BPMツールを導入すると、各業務の処理や承認、データ連携などをデジタル化することが可能です。紙媒体や人の手による作業を削減することで、担当者の負担軽減、業務の効率化が期待できます。
また、業務処理の自動化によって、複雑な業務処理に対するプレッシャーの軽減にもつながります。
②リアルタイムな情報共有ができる
2つ目のメリットは、各業務のリアルタイムな進捗状況をBPMツール上で共有できることです。
BPMツールを導入すると、業務プロセスにおける進捗状況や部門・担当者が持つ情報を確認できます。組織横断的な情報共有が可能になることで、タイムリーな意思決定ができるようになります。
さらに、業務遅延やミスなどを早期発見したり、フォローをしたりしやすい組織体制の構築につながります。
③業務を標準化できる
3つ目の導入メリットとして、業務を標準化できることが挙げられます。
各業務のフローや承認プロセスなどの分岐ルールを設定することで、誰でもルールに沿った処理が行えるようになります。
複雑な承認プロセスにおいても、従業員の判断に委ねることなく適正なフローで対応できるため、属人化を防ぎ、業務品質を担保できます。
④データ収集・分析ができる
4つ目のメリットは、業務に関するさまざまなデータを収集・分析できることです。
日々の業務における作業内容や進め方などのデータを収集・分析することで、業務プロセスにおけるボトルネック(※)を発見できます。
また、発見したボトルネックを踏まえて業務プロセスの見直しを行うことによって、よりよい業務プロセスへと改善できます。継続的に効果検証を行い、業務プロセスを修正していくことは、組織全体の最適化にもつながります。
※ボトルネックとは、業務効率や生産性などに悪影響を与えている工程のこと。
BPMツールの選び方
BPMツールを導入する際は、自社の業務体制や既存システムの状況を踏まえて選ぶことが重要です。ここからは、BPMツールの選び方について解説します。
①既存システム・データと連携できる
BPMに取り組む際は、組織における業務プロセス全体の最適化を意識することが重要です。そのために、各部署・業務で使用しているシステムやデータと柔軟に連携できるBPMツールを選ぶ必要があります。
▼チェックポイント例
- 使い慣れた書式を電子フォーマットで簡単に再現できるか
- 自社の承認規則を完全に反映できるか
- 経理・人事・文書管理システムなどの既存システムとデータ連携が可能か
また、データ連携の拡張性だけでなく、既存システムを代替できるBPMツールを選ぶこともポイントの一つです。各部署でブラックボックス化している既存システムがある場合にも、業務フローの見直しに伴って置き換えできるようになります。
なお、一度に大規模なシステム刷新を行う場合、業務フローの大きな変化や大規模な予算が発生するため、トラブルが生じやすくなります。BPMの拡張性を生かして、優先度の高い特定部門・特定業務からスモールスタートすることも一つの方法です。
②ノーコード・ローコードに対応している
ノーコード・ローコードに対応しているBPMツールを選ぶと、高度なプログラミング技術がなくとも業務フローのモデリングを作成できるため、柔軟かつ迅速なシステム構築が可能です。
BPMツールのなかには、提供元となるベンダーやSIer(System Integrator:システム・インテグレーター)が管理を行うものもあります。そのような場合、業務プロセスの変更・改善を自社だけで対応できず、追加のコストや開発期間などが別途発生してしまうことがあります。
プログラミングのような難しい知識が不要で、IT技術者ではない一般部門のユーザーでも変更できるツールになっていることが大きなポイントです。
コレオスのBPMソフトウェア『BP Director』は、ノーコード・ローコードでのシステム構築が可能です。導入事例については、こちらで紹介しています。併せてご確認ください。
③一般の従業員にも扱いやすい
せっかく導入するBPMツールが形骸化しないように、ユーザーとなる一般の従業員にも使いやすい仕組みを構築できるBPMツールを選ぶことが重要です。
例えば、以下のようなユーザーフレンドリーなUIを提供できるBPMツールを選ぶことで、定着化を図りやすくなります。
▼ユーザーフレンドリーなUIの例
- 使い慣れた既存の業務書式・申請書などと同じ電子フォームを用意できる
- 情報入力でつまずきやすい箇所にナビゲーションを入れられる
- 複雑な分岐条件を覚えなくても入力内容に応じて自動的に適用される
- タスクが発生した際に通知が届く
まとめ
この記事では、BPMツールについて以下の内容を解説しました。
- BPMツールとは
- ワークフローシステムやRPAツールとの違い
- BPMツールの導入メリット
- BPMツールの選び方
BPMの取り組みにおいて、業務プロセスを可視化・改善して最適化を図るためには、継続的なPDCAの取り組みが必要です。BPMツールを導入することで、これらの取り組みが自動化・電子化されて、効率的な運用が可能になります。
コレオスでは、組織のあらゆる業務プロセスを管理・可視化・実行するBPMソフトウェア『BP Director』を提供しています。既存システム・データの柔軟な連携ができるほか、ノーコード・ローコードでのシステム構築に対応しています。
BP Directorの特徴となる機能として、時間軸に対応したガントチャート形式の業務管理が挙げられます。複数部門で同時に進める業務を管理して、業務プロセスの改善をサポートします。
また、IT部門はもちろん、非ITの現場部門でも導入実績があります。業務プロセスの要件構築や内製化のサポートなど、ユーザー企業の状況に応じたサポートが可能なことも強みの一つです。
なお、業務プロセス管理については、こちらの記事をご確認ください。