業務プロセス管理で生産性の向上へ! 実施方法や注意点などを解説
さまざま業界で人手不足が叫ばれている今、企業が安定して継続的な経営を行っていくには、限られた経営資源を有効活用して、生産性の高い業務体制を整えることが求められます。
しかし、紙の書類・人の手による業務が多数存在している企業では、業務プロセスが複雑化しやすく、業務・システムのブラックボックス化(※)が発生しているケースも少なくありません。このような課題を解決するための取り組みとして、“業務プロセスの管理”が挙げられます。
この記事では、業務プロセス管理の概要をはじめ、具体的な実施方法や注意点、効率的に行うために役立つツールについて解説します。
※ブラックボックス化とは、業務やシステムの内部構造が複雑・不透明になっている状態のこと。
目次[非表示]
- 1.業務プロセス管理とは
- 2.業務プロセス管理のメリット
- 3.業務プロセス管理の方法
- 3.1.①業務を可視化する
- 3.2.②課題を洗い出す
- 3.3.③改善計画を策定する
- 3.4.④計画を実行する
- 4.業務プロセス管理の注意点
- 5.業務プロセス管理にはITツールの活用が有効
- 6.まとめ
業務プロセス管理とは
業務プロセス管理とは、組織の目標達成に向けて一連の業務の流れを管理することです。
部署や業務ごとのプロセスを個別管理するほかに、組織全体の業務プロセスを管理・改善して生産性の向上を目指すことも含まれています。これを、BPM(Business Process Management:ビジネス・プロセス・マネジメント)といい、ビジネスプロセス管理とも呼ばれます。
複数の部署で横断的なやり取りが必要な業務や、紙の書類・人の手による作業などが多い場合、業務プロセスが複雑化しやすくなり、生産性の低下につながります。
業務プロセス管理では、各業務のプロセスを可視化してボトルネック(※)を洗い出したあと、継続的な改善と最適化を図る目的があります。
※ボトルネックとは、業務効率や生産性などに悪影響を与えている工程のこと。
業務プロセス管理のメリット
業務プロセス管理を行うことで、以下のメリットが期待できます。
- 生産性が向上する
- 業務の属人化を防げる
- リスクが低減する
企業活動の成果は、複数のプロセスを経由して生み出されます。組織規模が大きく複数の部署が存在する場合には、業務プロセスが複雑化・分断化しやすく、ブラックボックス化や意思決定への遅れ、オペレーションコストの増加などにつながるおそれがあります。
業務プロセス管理を行うことで、ボトルネックが見つかり、問題のある業務の合理化・標準化を図れます。業務プロセスが改善されると、効率的な業務体制を構築できるようになり、生産性の向上にもつながります。
また、業務プロセスを可視化して、各業務のフローを標準化することで、だれもが同じ品質で業務に対応できるようになり、属人化を防ぐことが可能です。
さらに、組織全体で業務プロセスの進捗状況を把握すると、進捗の遅れや特定の担当者へのタスク過密化などのトラブルを早期発見して、問題解決のためのフォローを行えます。対応漏れや業務遅延などのリスクを未然に防止できるようになり、よりよい体制の構築につながります。
業務プロセス管理の方法
業務プロセス管理は、大きく4つのステップで実施します。ここでは、業務プロセス管理の方法を具体的に解説します。
①業務を可視化する
業務プロセス管理を行うにあたって、社内に存在するあらゆる業務を洗い出して、可視化する必要があります。
どのような流れや方法で業務を行っているか、部署・チームの業務を階層別に洗い出します。このとき、タスクの粒度を揃えるために、階層別に業務のカテゴリを分けて細分化することがポイントです。例えば、見積書作成の業務であれば、作成者・顧客への提出者と承認者を分けて、粒度を揃えます。
▼タスクの粒度例(見積書の作成)
タスク |
担当者 |
①顧客から見積もりの依頼を受ける |
営業事務 |
②見積書を作成する |
営業担当者 |
③見積書を確認・承認する |
営業課長 |
④顧客へ見積書を提出する |
営業担当者 |
また、作業手順や承認の流れを視覚的に把握するために業務フローチャートを作成することで、部署間のやり取り、業務の関連性を整理しやすくなります。
▼業務フローチャートの作成例
業務フローチャートにまとめる情報としては、以下が挙げられます。
- 業務内容
- 作業・処理方法
- 担当者
- 使用するシステム
- 業務の所要時間
- 条件分岐(どのような条件・判断で次のフローに進むのか)
- インプット(業務に必要な情報・モノ)
- アウトプット(業務の結果として生み出した情報・モノ)
②課題を洗い出す
現在の業務を可視化できる状態になったら、非効率なフローや作業のムダ、遅延などの課題を洗い出します。
この際、従業員へのヒアリングを行い、インプット・アウトプットを洗い出すことでことで、個別で管理している業務やイレギュラー対応が頻繁に発生する業務など、現場に埋もれた課題をより詳細に把握できるようになります。
▼インプット・アウトプット例(見積書の作成)
区分 |
状況 |
インプット |
顧客からの見積もり依頼を受ける |
業務プロセス |
見積書の作成 |
アウトプット |
見積書を顧客へ提出する |
また、課題を洗い出す際に確認するポイントとして、以下が挙げられます。
▼確認するポイント
- 業務量に対して担当人数が適切か(特定の担当者のタスクが多くないか)
- 時間・工数がかかり過ぎている業務はないか
- 担当者によって作業方法・手順が異なる業務はないか
- 部署・担当者間のやり取りが非効率なフローはないか
- 手待ちが発生している業務はないか
- 予定どおりの時間・納期で業務を実行できているか
- 修正・差し戻しなどの工程が複数回行われていないか
③改善計画を策定する
ステップ②で洗い出した現状課題を踏まえたうえで、各業務の作業方法やフローの見直しを検討して、改善計画を策定します。
改善計画を策定する際は、課題の重要度別に優先順位を付けて、ハードルが低い施策から実行に移すようにすることがポイントです。また、現場の混乱を防ぐために、計画実施までの流れをまとめた進行管理表を作成することも有効です。
業務プロセスの改善例として、以下が挙げられます。
▼業務プロセスの改善例
課題 |
改善方法 |
時間・工数がかかっている |
ITツールを導入して効率化を図る |
承認待ちが発生している |
電子申請を導入する |
作業方法が異なる |
マニュアル作成や作業の自動化によって業務の標準化を図る |
④計画を実行する
作成した業務プロセスの改善計画を実行します。事前に設定した優先度に応じて、ハードルが低いものから取り組むことがポイントです。
また、新しい業務プロセスが定着したあとも、新たな問題が出てくる可能性もあるため、定期的に見直すことが重要です。
業務プロセス管理の注意点
ITツールや電子申請などの導入によって業務フローが大きく変わる場合には、現場に混乱が生じる可能性があります。
新しい業務フローをスムーズに導入できるように、仮想業務でテストを実施する、段階的に新プロセスに移行するといった対応が求められます。
また、改善計画を実行する際は、新しい業務プロセスで発生した問題点・改善点を記録して分析を行い、定期的に軌道修正を図ることがポイントです。このように、定期的な分析と改善を繰り返すことで、業務プロセスの最適化につながります。
業務プロセス管理にはITツールの活用が有効
業務プロセス管理を効率的に行うには、ITツールの活用が有効です。
ITツールを活用することで、業務の可視化や課題の洗い出し、計画実行時の進捗管理、データに基づいた効果検証などを効率的に行えるようになります。
また、組織全体の業務を集約して管理できるため、業務プロセス管理を継続的に行える環境を構築できます。直感的にプロセスを構築できるツールもあるため、導入する際は選び方についても確認しておくことが重要です。
業務プロセス管理に役立つITツールには、以下が挙げられます。
▼業務プロセス管理に役立つITツール
ITツール |
内容 |
業務プロセス図(BPMN)の描画ツール |
業務プロセスのフローチャート図を作成するツール |
プロセスマイニングツール |
業務のログを取得して、業務プロセスのモデルを出力するツール |
BPMツール |
業務のプロセスを管理して可視化や改善を行い、最適化するツール |
BPMツールの導入メリットや選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、業務プロセス管理について以下の内容を解説しました。
- 業務プロセス管理
- 業務プロセス管理のメリット
- 業務プロセス管理の方法
- 業務プロセス管理の注意点
- 業務プロセス管理に役立つツール
業務プロセス管理を行う際は、業務を洗い出して、課題を見つけることが必要です。業務フローチャートを作成することで、業務の関連性や流れを把握しやすくなり、改善点を見つけやすくなります。
業務プロセス管理の改善計画を実行したあとは、定期的に効果検証と分析を行い、改善につなげていくことがポイントです。また、より効率的な管理を行うには、業務プロセス管理ができるツールを活用することがおすすめです。
『コレオス』が提供する『BP Director』は、業務プロセスを可視化して、継続的な改善を行えるBPMソフトウェアです。ドラッグ&ドロップのみで業務フローを描けるため、BPMNの記述ルールを新たに習得する必要がなく、直感的にプロセスを構築できます。
さらに、プロセスマイニングツールの場合、業務ログの蓄積から分析に一定期間がかかります。しかし、BP Directorでは、業務プロセスを構築して利用を開始する段階からデータが収集されるため、使いながら改善に向けたアクションが可能です。