LMS(学習管理システム)とは?どのようなものがある?最新の導入・活用傾向は?教育機関向けに解説
皆さんこんにちは。
新型コロナウイルスの感染拡大で学生の通学が制限される中、教育機関では対面型の授業のみにとらわれない、柔軟な授業運用が求められました。遠隔地の学生も学べるオンライン授業の基盤となるのが、「LMS(学習管理システム)」です。私たちコレオスは、教育機関のお客様にLMSを提供し、授業のオンライン化やオンライン授業の円滑な運用をお手伝いしています。
本記事では、この「LMS」について、基本的なことから、最新の利用傾向、実際の導入活用事例まで、幅広く説明いたします。
「LMSって何?」
「どの程度の機関が、どのように使っているの?」
「最近のLMSにはどのようなものがあるの?」
これらのような疑問をお持ちの方は、ぜひご覧いただき、LMSについての理解を深める一助になさってください。
目次[非表示]
- 1.LMS(学習管理システム)とは
- 2.LMSが生まれた背景とメリット
- 3.日本の高等教育機関における導入・活用状況
- 4.どのような種類があるか
- 4.1.「無料」のオープンソースLMS
- 4.2.ベンダーが開発・販売するLMS
- 4.3.独自開発LMS
- 5.最近の傾向
- 6.実際の大学での活用例
LMS(学習管理システム)とは
「Learning Management System(ラーニング マネジメント システム)」の略で、日本語では「学習管理システム」とも言われます。eラーニングを支えるITシステムで、教育機関や企業、各種スクール等、教育が行われる場で利用されます。本記事では、特に大学などの高等教育機関におけるLMSについて、解説します。
LMSの一般的な機能や利用イメージは、以下の図をご覧ください。
LMSが生まれた背景とメリット
パソコンやインターネットが普及すると、従来のアナログな教育・学習方法に加え、教員が用意した動画やスライド資料などの電子形式の教材を、学習者が自分のPCやスマホで視聴し学ぶeラーニングが、一般的になりました。
この方法は、時間や場所に制限されず、教員が教材を学習者に配布さえすれば、あとは学習者が各自で学習を進めるだけなので、効率が良いというメリットがあります。学習者にとっても、好きなタイミングで教材を閲覧したり、何度も見返したりできるのが魅力です。
しかし、教材配布後の学習は、教員の目が届きづらく学習者任せになりがちです。教材が最後まで閲覧されたのかや、学習者がどの程度理解できたのかを、教員が把握しづらくなります。また学習者にとっても、教員や他の学習者と直接顔を合わせる機会が限られるので、孤独感を抱きやすくモチベーションの維持が難しい課題もあります。
これらの課題を解決すべく、LMSが開発されました。
LMSにより、教員は教材を配布するだけでなく、わかりやすく整理・蓄積したり閲覧権限を細かく設定したりでき、多くの教材をより効率的に管理できます。さらに、学習者の進捗や成果が可視化されリアルタイムで確認することができ、理解度を確認するための小テストや課題の実施から採点、詳細な分析も簡単で、今後の指導計画や教材作りに活かせます。
掲示板などのコミュニケーション機能により、教員と学習者で、学習者同士で、離れていてもこまめに連絡を取り合うことができます。学習内容に関連した意見交換や議論を行えば、より学びを深めることも可能です。
以上のような背景とメリットから、LMSは様々な教育の場で活用されています。オンライン教育ではもちろん、従来の対面での学びを補完し深めるための仕組みとしても使われます。
日本の高等教育機関における導入・活用状況
大学ICT推進協議会(AXIES)による2020年7月の「高等教育機関におけるICTの利活用に関する調査研究結果報告書(第2版)」をもとに、日本の高等教育機関におけるLMSの導入、活用の傾向を見てみましょう。
調査によれば、4年制大学のおよそ7割が何らかの形(全学レベル、部局レベル、教員個人レベル)で導入しており、設置者別の導入率は、国立大学が91.8%、公立大学では47.8%、私立大学では68.1%です。日本国内の大学の多くが、LMSを導入していることがわかります。
ただし、活用が十分に進んでいない現状も伺えます。各大学の全開講科目のうち、LMSを利用している科目の割合は、国公立大学、私立大学ともに2〜3割にとどまります。ちなみに米国では、2013年時点で大学の導入率は100%、利用率は62%です。それと比較すると、日本の教育機関におけるLMSの導入・利活用状況はまだ発展途上といえます。
ICT活用教育の導入や推進を妨げる阻害要因の有無の調査では、約7〜8割の高等教育機関が「存在する」と回答していて、その要因にコスト(予算、時間、人材)や教職員のノウハウ・スキル不足などをあげています。
以下に紹介するような、LMSの導入・運用を支援するサービスやベンダーを活用したり、クラウド型のLMSを活用したりすることで、時間や人的リソースを捻出し、よりLMS利活用に注力できるかもしれません。
また、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大に伴い、授業のオンライン化の需要が高まったことで、LMSの利活用を再検討し、普及させる機会が生まれた教育機関も、多いのではないでしょうか。
どのような種類があるか
さて、実際にはどのようなLMSが存在し、使われているのでしょうか。先のAXIESの調査で、多くの高等教育機関が利用している
- 「無料」のオープンソースLMS
- 各ベンダーが開発・販売するLMS
- 独自開発LMS
の3種類について、解説します。
「無料」のオープンソースLMS
LMSの中には、無料で利用できるオープンソース型(プログラムのソースコードが公開され、誰でもカスタマイズできる状態)のものがあります。ここでは、AXIESの調査で特に利用割合が高い、「Moodle(ムードル)」を例に紹介します。
Moodleは、オーストラリアの教育専門家Martin Dougiamas氏により開発され、2002年にリリースされた、オープンソースのLMSです。現在も開発が続けられ、日々性能は進化し続けています。
日本を含む世界各国の多くの教育機関や企業で利用され、2020年3月時点で、開設されているサイト数は14万5,000以上、ユーザー数は1億9,000万以上です(Moodle公式Webサイトより)。
Moodle公式Webサイト。ここから誰でも無料でインストールできる。 |
メリットは、まず無料で導入できコストを抑えられることです。そのままでもLMSの一通りの機能が揃っていますが、必要に応じてカスタマイズも可能です。多くのユーザーが様々なオプション機能(プラグイン)を開発、公開しており、それらを使えばゼロから作らずとも、必要な機能を簡単に追加できます。また、ユーザーのための会合やオンライン上の交流が盛んに開催され、情報交換が活発で、困った時に相互支援を受けられるのも特長です。
ただし、注意点もあります。インストール、初期設定、その後のセキュリティ対策やバージョンアップなどの運用管理まで、すべて自分たちで行う必要があります。疑問、インシデントの発生時には、自分たちで必要な情報を取りに行き、対処せねばなりません。
日本Moodle協会も、以下のように述べています。
先生が自分で立てたWebサーバーにMoodleを導入してサービスを提供する場合は一切、お金が発生しませんが、これはいずれ限界を迎えます。きちんと予算を取ってWebサーバーを学校で導入し、正規業務の一つとして情報処理センター等の職員の業務に組み込むべきでしょう。Webサーバーの更新費用も予算計画に組み込むべきです。
これは、Moodleに限らず多くの無料LMSに当てはまる注意点です。安易に使い始めず、自分たちの予算、人員、時間などを踏まえ、計画的に導入、運用することが求められます。
Moodleに興味はあるものの、自分たちだけで運用できるか不安がある場合は、Moodleの導入や運用管理の支援サービスを行う企業に頼ることも、視野に入れましょう。
例えば、私たちコレオス株式会社でも、Moodleをベースに開発されたクラウド型のLMS「Open LMS(オープンエルエムエス)」を取り扱っています。Moodleのメリットはそのままに、効果的な教育、学習、管理を助ける独自機能と、安心の導入・運用サポートが一緒になったLMSです。ぜひお見知り置きください。
ベンダーが開発・販売するLMS
ベンダーがパッケージとして開発、販売しているLMSも多数あります。もちろん有料ですが、システムの構築、運用の一部もしくはすべてを任せられ、疑問点や困りごとの相談にも応じてもらえるので、自分たちの管理負担を抑えつつより効率的なLMSの活用が可能になります。
教育機関向けか一般企業向けか、オンプレミス型かクラウド型か、対応できる授業数や学生数など、それぞれの製品に得意分野があります。自分たちのLMSの利用目的や必要な機能、利用者数、どこまでを自分たちで行いどこからを任せるかなどを踏まえ、選びましょう。
必要な機能を必要な時に追加できるような柔軟性は、Moodleや独自開発LMSに軍配が上がりますが、ある程度カスタマイズや他システムとの連携が可能な製品もあります。必要な場合は、製品の担当者に確認してみてください。
米国Blackboard社が開発する「Blackboard Learn(ブラックボードラーン)」。 世界中の多くの教育機関が利用しているLMSの一つ。 |
私たちは先にご紹介したOpen LMSに加え、日本を含め全世界の教育機関や企業で活用されている「Blackboard Learn(ブラックボードラーン)」も、日本総販売代理店として提供しております。カスタマイズ性が高くほかの多くの教育系システムとの連携も可能ですので、こちらもぜひお見知り置きください。
独自開発LMS
自分たちでゼロからLMSを開発し、運用している大学もある程度存在します。
これまでのLMS運用の中では一番多くの時間と人員、高度なスキルが必要ですが、自分たちの目的に必要な機能を過不足なく盛り込め、必要な機能の事後追加やインシデント対応も自分たちだけで完結・管理でき、迅速に対応できるのが強みです。
モバイル機器の普及やデータ通信量の増加、ネット犯罪の巧妙化など、IT技術の進化は日々目まぐるしく、時代とともに教職員と学生のニーズも変化する可能性があります。開発後も機能の改善、追加が必要になる可能性も見据え、検討しましょう。
最近の傾向
クラウド型の普及
以前は、セキュリティへの配慮等から教育機関内にサーバーを用意し、LMS環境を構築するオンプレミス型が一般的でしたが、昨今のクラウド技術の進歩により、クラウドに対応したLMSも普及しています。
クラウド型のLMSは、自分たちでサーバーを用意する必要がないため、導入や構築がよりスピーディーです。利用者やアクセス数が増加した際も、サーバーを物理的に追加する必要はありません。サーバー管理の負担を抑え、LMSの利活用にリソースを集中させられます。
モバイル対応
スマートフォンなどのモバイル機器の発達に伴い、パソコンよりもスマートフォンの方が使い慣れているという学生も多くいます。このニーズに応え、モバイル端末からも利用できるLMSも増えています。
授業以外にも実習、部活動やアルバイトなどで忙しい学生にとっては、常に持ち歩くスマートフォンでアクセスできるシステムの方が、より使いやすいでしょう。
先に述べた通り、IT技術は日々進歩しています。LMSを運用する際は、自分たちで開発・運用するにしろ、外部の力を借りるにしろ、技術の進歩に対応し変化する学生と教員のニーズに常に応えていけるよう、長期的な運用計画を考える必要があります。
実際の大学での活用例
最後に、弊社が構築や運用をお手伝いしている、実際の大学のお客様の導入経緯や活用方法をご紹介します。各事例の詳細ページでは、動画やPDFも用意していますので、ぜひご覧ください。
帝京大学様(Blackboard Learn)
帝京大学様は、従来型の授業だけでは難しい、学生の理解度に合わせた個別対応を実現できるとして、Blackboard Learnを活用し動画やスライドなど、多様な教材を学生に提供しています。学生が自分に合った教材を選べることで、主体的に学ぶ姿勢を育めると考えています。
2002年から現在までBlackboard Learnを使い続けている理由として
- 大規模運用が可能
- 多機能で、授業支援だけでなく様々な学内の要望に応えられる
- インターフェースがシンプルで使いやすい
の3点をあげます。
早稲田大学様(Open LMS)
従来の独自開発LMSのメンテナンスコストや大規模利用時の安定性に課題をお持ちだった早稲田大学様。クラウドによりメンテナンスを効率化できる点と、6万人規模での利用実績を持つ点から、Open LMSへ移行しました。
コロナ禍のもと開始された2020年の春学期には、ほぼすべての科目で利用され、初日にはアクセスが集中しましたが、トラブルなくスムーズにオンライン授業をスタートできました。小テストや提出課題の運用が効率化し、メッセージ機能で教員と学生とのやりとりが活発化したといいます。
ほかの教育機関や企業のお客様の導入事例も、こちらよりお読みいただけますので、ぜひチェックしてみてください。
以上、LMSとは何かについて、最新の動向等を交えご紹介しました。皆様のLMSについてのご理解が深まり、今後の導入、活用のご検討の機会にお役立ていただければ幸いです。