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【イベント開催報告】高等教育界における「AI」「データ活用・分析」の“今”をあらためて考える1Dayセミナー「Connected Japan - 高等教育におけるAIとデータの活用・分析 -」

皆様こんにちは。

コレオス株式会社は、去る9月13日に、高等教育機関ご関係者様向けの対面イベント「Connected Japan - 高等教育におけるAIとデータの活用・分析 -」を開催いたしました。
当記事は、各講演の要点をご紹介する、開催報告となります。 

Chat GPTなどのAIツールが普及し始めた現在、高等教育の現場でも、学内利用に関するガイドラインの整備や活用方法の研究が進められています。またコロナ禍の影響で授業のオンライン化も加速した結果、LMS(学習管理システム)に蓄積されたデータなど、多様なデータを分析し教学活動に活かそうとする取り組みも進んでいます。

本イベントは、高等教育における「AI」と「データ活用・分析」の2つをテーマに、高等教育界でAIやデータ活用・分析に関わる方に、これまでの動向と今後の方向性を提示する基調講演、国内外における具体的な取り組み事例、先進的なEdTech・教育ICTツールが可能にするソリューションなどの情報をご提供しました。

高等教育機関は、AIをどのように教え、取り入れるべきか。
どのようなデータを集め、分析すれば教育に活かせるのか。

AIリテラシー教育や授業でのAI活用、学習データの分析活用方法を模索中の方は、ぜひご覧ください。

目次[非表示]

  1. 1.Connectedとは
  2. 2.開会挨拶 David Ells, Managing Director, Open LMS, Learning Technologies Group plc
  3. 3.基調講演Ⅰ「AI時代の高等教育のあり方とは」東京大学大学院 情報学環 学際情報学府 教授 山内 祐平 氏
  4. 4.主催者講演「AIとデータ活用・分析のためのデータレイク基盤」アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアソリューションアーキテクト 櫻田 武嗣 氏
  5. 5.基調講演Ⅱ「大学情報環境における挑戦〜AI時代におけるデータマネジメント戦略〜」名古屋大学 情報基盤センター 教授 / 京都大学 名誉教授 梶田 将司 氏​
    1. 5.1.大学における情報環境整備の構造変化
    2. 5.2.東海国立大学機構デジタルユニバーシティ構想から見えてきた課題
    3. 5.3.エンタープライズアーキテクチャの大学での援用に向けて
    4. 5.4.今後の大学におけるデータガバナンスのあり方
  6. 6.講演Ⅰ「英語学習における生成AIの可能性と活用事例」前橋工科大学 工学部工学教養領域 講師 河内 健志 氏
    1. 6.1.生成AIの英作文評価における有用性と主体的な学習者育成の可能性
    2. 6.2.生成AIを活用した授業事例
  7. 7.スポンサー講演「TeacherMatic~現代の教育者のための究極のAIアシスタント~のご紹介」TeacherMatic
  8. 8.講演Ⅱ「生成AIによる学習データ分析支援」広島大学 情報メディア研究教育センター 教授 隅谷 孝洋 氏​
    1. 8.1.定量データの分析
    2. 8.2.定性データの分析
  9. 9.Q&Aセッション
  10. 10.主催者講演「Open LMSが切り拓く教育分野におけるAIの進路とは」Liam Liddicoat, Senior Director APAC, Open LMS, Learning Technologies Group plc
  11. 11.主催者講演/閉会挨拶「データ分析とAIの活用を実施するためのLMSの在り方」コレオス株式会社 Education Sales Group 澤田 良二
  12. 12.最後に

Connectedとは

「Connected(コネクティッド)」は、高等教育関係者が一堂に会し、教育者や教職員、学習者が今日直面している最も差し迫った課題についての成功事例を共有し、協力し合うための、全世界規模の特別なイベントです。

全世界に広く、MoodleベースのLMS「Open LMS(オープンエルエムエス)」などの教育ICTサービスを提供する、英国Learning Technologies Group plc(LTG社)により、2023年アメリカ、フィリピンでの開催を皮切りに各国で開催され、約220名の教育の専門家や関係者が参加し大きな反響を集めました。
この度日本でも、日本の教育機関様へOpen LMSを提供するコレオス株式会社と、LTG社、Open LMSのパートナーであるAmazon Web Services, Inc.(アマゾン ウェブ サービス)の3社の共催で、初めて開催する運びとなりました。

開会挨拶 
David Ells, Managing Director, Open LMS, Learning Technologies Group plc

最初に、主催者であるLTG社Open LMS部門のマネージング・ディレクター David Ells より、ご来場者の皆様へお礼を申し上げ、およそ10年間ラーニングアナリティクスに携わってきた経験から、世界中の大学が、生涯学習者の育成を視野に入れた教育にシフトしていることに触れ、特に米国とオーストラリアでは革新が顕著であると述べました。

さらに、目標に基づいたデータの活用、自動化、基礎データの整備の3点が、ラーニングアナリティクスの成功の鍵であると強調しました。

基調講演Ⅰ「AI時代の高等教育のあり方とは」
東京大学大学院 情報学環 学際情報学府 教授 山内 祐平 氏

最初の基調講演では、東京大学大学院情報学環に所属し、同大学EdTech連携研究機構の機構長も務める、山内 祐平(やまうち ゆうへい)先生に、AI時代における大学の役割、生成AIを活用した教育の未来についてお話しいただきました。

まず大学に求められる役割は、生成AI登場以前から絶えず変化し高度化を求められてきた、としたうえで、現在は、「AIによる代替が可能な職業が増加する」という議論のもと、OECDの「ラーニングフレームワーク2030」で挙げられている「新たな価値を創造する力」「責任ある行動をとる力、」「対立やジレンマに対処する力」、さらにデータリテラシー、デジタルリテラシーなどの高度なスキルを身に付けた人材育成が求められている、といいます。

現在OECDが提唱している、「The OECD Learning Compass 2030」。
引用元: https://www.oecd.org/en/data/tools/oecd-learning-compass-2030.html

有効なのがプロジェクトベースやプロブレムベースのアクティブラーニング(PBL)で、これらに生成AIを組み込むことで、より学びを深められると説明しました。

そして生成AIの活用のために必要なステップを

  1. 「憲法」となる大学としてのガイドラインの作成
  2. 従来の情報教育へのAIリテラシー教育の統合
  3. 生成AIを取り入れたPBL

とし、それぞれのポイントや具体例を、実際の検証や研究結果を交えてお話しいただきました。

主催者講演「AIとデータ活用・分析のためのデータレイク基盤」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアソリューションアーキテクト 櫻田 武嗣 氏

続く主催者講演では、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアソリューションアーキテクト 櫻田 武嗣(さくらだ たけし)氏より、データや生成AIの活用に役立つ「データレイク」という考え方について、ご紹介いただきました。

データ活用、分析、生成AIの活用を正しく行うには、まずデータを適切に収集することが重要で、鍵となるのが「データレイク」です。

従来のデータベースやデータウェアハウスでは、目的に応じて加工されたデータを保存することが一般的でしたが、データレイクには、データを加工せずに「生」の状態で保存し、将来にわたり多様な活用ニーズにも対応できるようにします。また、加工したデータや分析結果もデータレイクに蓄積し、サイロ化せず一か所に集約します。

データレイクに求められるのは、唯一の「真」のデータ置き場であること、データが失われないこと、データサイズの制限がないこと、APIなど所定の方法でアクセスできること、の4つであるといいます。

アマゾン ウェブ サービスでは、このデータレイクの実現に有効な「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」を提供しています。さらに、データ分析や活用には、Amazonの200を超えるサービスがサポートする、とご紹介いただきました。

どのサービスを、どう使うのが良いかなどのご相談がありましたら、アマゾン ウェブ サービス 様へお気軽にお寄せください。

※ アマゾン ウェブ サービス 学術・研究機関様向け問い合わせ先:
  aws-jpps-er@amazon.com

基調講演Ⅱ「大学情報環境における挑戦〜AI時代におけるデータマネジメント戦略〜」
名古屋大学 情報基盤センター 教授 / 京都大学 名誉教授 梶田 将司 氏​

2つ目の基調講演では、長年、京都大学と名古屋大学の情報基盤整備に携わり、2020年のコロナ禍では、京都大学のLMS全学展開(科目数およそ9500~1万) を短期間で推進したご経験をお持ちの、名古屋大学 情報基盤センター 教授・京都大学 名誉教授である梶田 将司(かじた しょうじ)先生に、今後の大学の情報環境の整備のあり方や、トップダウン型ガバナンスの重要性についてお話しいただきました。

大学における情報環境整備の構造変化

これまで大学の情報環境整備はボトムアップ型で、縦割り組織の影響もありガバナンスは弱いものでしたが、2020年頃から、デジタル変革(DX)やコロナ禍の影響で、学内のどこにどのようなデータがあるかを把握し、どう活用すべきかを、大学経営の課題の一つとして捉える、トップダウン型の強いガバナンスに変化している、と述べました。

トップダウン型大学情報環境ガバナンスへの具体例として、ご自身が携わる、東海国立大学機構デジタルユニバーシティ構想の推進をご紹介いただきました。

東海国立大学機構デジタルユニバーシティ構想から見えてきた課題

東海国立大学機構デジタルユニバーシティ構想の概念図。
引用元: https://www.du.thers.ac.jp/overview/index.html

2020年4月、名古屋大学と岐阜大学が経営統合し、東海国立大学機構が発足しました。東海地域の学術・産業構造の変革をリードする新しい大学モデルを、デジタル技術を活用して模索しています。

デジタルユニバーシティ構想では、学生や研究者だけでなく、産業界や市民など約100万人を対象とした施策を、民間企業の手法も取り入れながら推進しています。名古屋大学と岐阜大学で共通の「機構アカウント」導入による、機構の各種システムのユーザー認証基盤の統一、LMS統合など、情報環境基盤の集約化を進めてきました。

先生は、この取り組の過程や関係者へのインタビューを通じて、トップダウン型ガバナンスを進めるための具体的な方法論の必要性を感じ、民間企業で活用されている「エンタープライズアーキテクチャ」に着目しています。

エンタープライズアーキテクチャの大学での援用に向けて

「エンタープライズアーキテクチャ(EA)」とは、組織全体の業務プロセスや資産を整理・設計し、組織全体のパフォーマンスを最適化するためのフレームワークです。世界的には、米国Fortune誌がトップ500に挙げる企業の3/4が、EAのフレームワークの一つ「TOGAF(R)(トガフ)」を採用しているというデータがあり、日本でも大企業を中心に採用する企業が少しずつ 増えています。

日本の大学の情報環境基盤のトップダウン型ガバナンスにおいても、例えば「授業支援」なら、学生に通知が届く、学生が課題を提出できる、教員が採点できる、など、必要な「アーキテクチャ」を定義し、それぞれをどの技術やシステムで実現するかを具体化に考えます。
さらにそれらをビルディングブロックとして標準化、簡単に再利用可能にすることで、情報基盤が集約化され、ガバナンス強化に役立つと考えられます。

世界規模では、欧米やオーストラリア、ニュージーランドの大学が共同で大学向けの共通アーキテクチャ「Higher Education Reference Model(HERM)」を作成しました。先生は、日本の大学でも、情報環境の評価や教育ICTツールの評価に活用できると期待しています。

さらに今年度、「大学ICT推進協議会(AXIES)」内に「情報環境部会」を立ち上げ、エンタープライズアーキテクチャを活用した大学の情報環境のガバナンスの実践知の共有を図る、と述べました。

今後の大学におけるデータガバナンスのあり方

これからのデータ駆動型の時代は、大学全体で組織基盤と技術基盤の運用戦略を明確化することが求められます。従来行われてきた図書館の整備などのナレッジ管理に加え、研究、教育、事務業務、経営などのあらゆるデータを一元的に管理する構造の構築が必要でとなり、それなくして生成AIなどの先進技術の活用は不可能、とまとめました。

AXIESの「情報環境部会」は、今年度からさっそく、部会や発表など議論の場を提供するとのことです。ご関心のある方はぜひチェックしてみてください。

講演Ⅰ「英語学習における生成AIの可能性と活用事例」
前橋工科大学 工学部工学教養領域 講師 河内 健志 氏

基調講演に続く講演では、実際の授業での生成AIとデータの活用事例と知見をご紹介いただきます。

1つ目の講演では、前橋工科大学 工学部工学教養領域に所属し、ICT利活用教育や理論言語学を研究されている河内 健志(かわうち けんじ)先生に、生成AIの英作文評価における有用性と主体的な学習者育成の可能性、および具体的な授業事例の2点をお話しいただきました。

生成AIの英作文評価における有用性と主体的な学習者育成の可能性

たとえば、150名の学生の英語エッセイを一つ一つ採点し、フィードバックするのは重要な教育プロセスですが、多大な時間と労力を要し、教員にとって大きな負担ともなります。フィードバックの公平性を確保するのも難しく、学生のモチベーションを高められるのかも不透明です。

これまでにも、生成AIツールは英文を効果的、かつ効率的に評価するツールとして有効である、とする研究や実践例はありますが、より英文評価の目的に適した生成AIツールはどれか、それぞれのツールの得手・不得手の検証が不十分であると指摘します。

そこで先生は、英語教育の現場で幅広く利用され、ご自身も使用している英文評価ツールを基準に、バージョンの異なるChat GPTやほかの生成AIツールで、実際に学生のエッセイを評価し、評価内容を比較検証しました。
結果、先生が使用する英文評価ツールのスコアと近い評価をしたのが、Chat GPT-4とChat GPT-4oでした。

ただしどの生成AIも共通して、Mechanics(綴りの誤り、文頭が小文字になっていないか、など)の評価は得意であるものの、Style(文章が長すぎないか/短すぎないか、頻発する語句がないか、など)の評価は不得意である傾向が確認されました。

したがって、英文評価ツールとしてAIツールを活用する際は、不得手な評価項目は教員・学習者ともに注意を向けることが必要と結論付けます。

他にも生成AIツールの有用性として、一人一人に合ったフィードバックを行う適応型学習が実現し主体的な学習者の育成が可能になる、Chat GPT上に評価過程の履歴が残りポートフォリオも作成できる、等を付け加えました。

生成AIを活用した授業事例

後半では、以下のような生成AIを用いた授業の実践事例について紹介しました。

  • 教科書内の英文の要約をAIで作成または英文の日本語訳を作成し、任意の個所を誤った情報に差し替え、学生に間違い探しをさせる
  • 学生に、自身が書いた要約文と、Chat GPTの要約文とを比較させ、Chat GPTからの評価や提案から、自身が納得できるもののみを採用して修正し、提出させる。

これらの授業を行ったリーディングクラスの学生の多くが、以前より英文を読む量が増え、分析的に、論理構造を意識しながら読むようになった、とアンケートで応えています。

最後に、以下のようにまとめました。

  • これから学生には英語力、判断力、広範な知識と、それらを土台とした創造的にAIを活用する力が求められる
  • 学習の主体は学生であり、教員は指導者ではなく伴走者である
  • 生成AIはあくまで自身を映す鏡に過ぎず、自身の能力以上の返答は得られないため、上質な返答を得るには自身の研鑽も必要。また相棒でもなく、単なるツール、道具であり、教育のすべてを補完する必要はない

スポンサー講演「TeacherMatic~現代の教育者のための究極のAIアシスタント~のご紹介」
TeacherMatic

スポンサー講演では、AI技術搭載の教育アシスタントツール「TeacherMatic(ティーチャーマティック)」より、ビデオレターにて概要やメリット、事例をご紹介しました。

TeacherMaticは、授業計画作成、問題作成など、生成AIを搭載した90以上の機能で、教育現場の業務効率や生産性の向上を支援するツールです。学生へのきめ細かいフォローなどのより重要な業務への集中、ワークライフバランス推進をお手伝いします。

開発元が所在するイギリスを中心に、全世界の300以上の教育機関、40,000名以上の教職員が利用しており、選ばれる理由には、ITに慣れていない人でもすぐに利用できる直感的でわかりやすい操作画面、GDPR(EU一般データ保護規則 )に準拠したセキュリティ性などがあります。

実際の利用者からは、1人あたり1週間で約4時間節約できた、わずか10秒で授業計画のたたき台を作成できた、などの好評を得ています。
会場では、実際に使用している教員の生の声をご紹介しました。

現在日本でも、弊社より教育機関様へご提供できるよう、調整を進めております。
ぜひご期待ください。

講演Ⅱ「生成AIによる学習データ分析支援」
広島大学 情報メディア研究教育センター 教授 隅谷 孝洋 氏​

続く2つ目の講演では、学習データ分析の事例として、広島大学 情報メディア研究教育センターに所属し、教育へのICT利用支援と情報教育を研究されている、隅谷 孝洋(すみや たかひろ)先生に、 LMS(学習管理システム)内のデータ分析を、生成AIがどのように支援できるかについてお話しいただきました。

まず、先生はLMS内のデータを以下3種類に分類します。

  • アクセスログ…アクセスタイミングや滞留時間など
  • コースデータ…テストの得点や提出物、アンケート結果など
  • 文脈を踏まえたデータ…教材の難易度や教師の説明との関係などと関連付けたデータ

これらのデータは一般的にCSVなどのファイル形式で取得可能で、生成AIでどのように分析できるかを、定量データと定性データに分けてお話しいただきました。

定量データの分析

統計分析やデータサイエンスの手法を取り入れることが可能ですが、データが蓄積されるLMS(学習管理システム)の計算能力は限られています。それを補完するのが生成AIです。

例えばChat GPTの場合、プラグインを使うと、自然言語(人間が普段のコミュニケーションで使用する会話のような文章)で指示するだけで、分析プログラムのコード生成、データ分析そのものやグラフへの出力が、簡単に可能です。グラフの見栄えの調整も簡単であると言います。

定性データの分析

自由記述や対話の要約はAIが得意とする分野であり、テキストマイニング*1や、ベクトル埋め込み*2、数値を用いた感情分析・評価、ラベル付けなどの定量化も、関連技術を用いて実現可能といいます。

実際に学生からの授業へのコメントをChat GPTに読み込ませ、数値でネガポジ評価させた例をご紹介いただきました。

このように、生成AIと周辺技術を用いることで、LMS内の膨大なデータを効率よく分析できる、と結論付けました。

*1 テキストマイニング… テキストデータの分析手法の一つで、文章を単語や文節などの単位で区切り、出現頻度や相関関係、出現傾向、時系列などを解析し情報を得る手法。

*2 ベクトル埋め込み…同じくテキストデータの分析手法の一つで、単語や文章を意味や相関性を表す数値に変換する手法。

Q&Aセッション

続いて、ご参加者様が、これまでの講演内容や、「AI活用」「データ分析・活用」に関連する疑問を、講演者の皆様に、直接質問し答えていただけるQ&Aセッションを実施しました。

主に取り上げられた質問は、

  • 生成AIを活用できる人と活用できない人、または生成AIの活用で成長する人と単にズルのツールとしてしか使えない人といった、「格差」が生じる懸念に対し、どう向き合うべきか
  • 従来から研究されてきた、リアルな対話と、オンラインでの対話や生成AIとの対話のような視覚の要素が少ないテキストベースでの対話との、共感の生まれやすさと教育効果の違いをどう考えるか
  • 音声データまで分析の対象となった場合の可能性と倫理的な観点からの懸念点

などでした。

単なる質疑応答にとどまらず、講演者や来場者の皆様のこれまでの研究や、教育現場での経験に基づいた、掘り下げた議論もしていただけました。

主催者講演「Open LMSが切り拓く教育分野におけるAIの進路とは」
Liam Liddicoat, Senior Director APAC, Open LMS, Learning Technologies Group plc

最後の主催者講演では、Open LMS開発元のLTG社の、アジア太平洋地域のディレクターLiam Liddicoatより、Open LMSによるAI技術の教育への導入支援について講演しました。

Open LMSは、Moodleをベースに開発され、個別最適化教育を支援する機能や豊富なレポートティング機能などの独自機能を搭載し、導入や運用がスムーズなクラウド型で利用できるLMSです。

講演ではまず、教育機関が新しいICT技術を導入する際に直面する「購入か、構築か」という選択について触れ、海外のOpen LMSの顧客事例を紹介します。

フィリピンのある大学では、AIツールであるTeacherMaticを「購入」、Open LMSと連携し、教師の業務負荷軽減と、学生ごとに個別最適化された学習体験の実現を両立させています。
もう一つの、オーストラリアのある大学は、大学独自のニーズに合わせたAIチャットボットを「構築」し、学生からの質問に即座に回答するシステムを、Open LMS上で実現しました。

以上の事例を踏まえ、Open LMSはMoodleベースならではのオープンなAPIにより、幅広いICTツールを簡単に組み込み可能な柔軟なプラットフォームを提供し、 購入したものでも、独自構築したものでも、教育機関が将来に渡り、AIなどの最新技術を簡単に教育へ組み込めるよう対応する、と述べました。

主催者講演/閉会挨拶「データ分析とAIの活用を実施するためのLMSの在り方」
コレオス株式会社 Education Sales Group 澤田 良二

最後に、弊社コレオス株式会社より、Open LMSが現在対応している機能から、今後搭載予定であるAI機能、将来の技術進歩に合わせた拡張性についてご紹介いたしました。

アシストマイクロ株式会社は今年4月に、 グループ会社の株式会社グリーン情報システムズと統合し、コレオス株式会社に社名変更しました。「共に歩み、新たな価値を創造する」という新しい理念のもと、動画管理システムや剽窃チェックツールなど幅広い外部システムとの連携が可能なOpen LMSの柔軟性を生かし、教育機関様の教育エコシステムの構築支援を強化してまいります。

高等教育機関において高まるデータ分析ニーズへは

  • 授業の脱落者防止、教材の見直し・改善などの、教育現場での課題を解決するための学修分析・レポート機能
  • LRS(Learning Record Store)へのデータ集約化に対応する、xAPIやCaliper形式でのデータ出力機能

等でお答えします。

またAI技術の教育への組み込みについても、問題の自動生成機能、教材に使用する画像の生成機能、学生からの質問に答える大学独自のチャットボットを構築できる「OpenAI Chat Block」のご提供で、支援します。

さらに、今後取り扱い開始予定のCopyleaks(コピーリークス)は、学生の提出物内のAI生成部分や剽窃をすばやく検知でき、学生への適切なAI使用や執筆マナー指導にお役立ていただけます。

最後に、今後も教育機関の皆様からご指導・ご鞭撻をいただきながら、技術の進歩や教育機関のニーズの変化に応じる柔軟な対応を進めていくことをお伝えし、閉会のご挨拶とさせていただきました。

最後に

以上、各講演やセッションの要点をまとめました。

本イベントは、弊社にとっても数年ぶりとなる対面形式での開催でしたが、当日は北海道から関西まで、全国各地の教育機関の皆様にご来場いただきました。

ご来場者様からは、

  • 自身の授業や業務に応用するイメージがしやすい講演が多く、引き込まれた
  • 全国の大学の先生方の取り組み例を聞けた、貴重な機会であった
  • 生成AIにより生じる「格差」拡大などのリスクや、今後の大学の役割について、改めて考えさせられた

などのご感想もいただき、ご参加の皆様へ充実したイベントをお届けできたと考えております。

講演者様、ご参加いただいた皆様、共催企業、スポンサー企業の皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。

本イベントや当記事が、教育機関の皆様の今後のAIやデータ分析・活用の一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

講義の間にはランチタイムをご用意し、会場の皆様に、食事をとりながら和気あいあいと情報交換をしていただきました。

> 今後の最新のイベント情報はこちらをご覧ください。

> 当記事に記載されている製品についてのお問い合わせやご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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